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【90分間の観戦マイルール】Case5ウエストランド・井口浩之さんは、アップもビールも、もちろんプレーも。試合の前後も含めて“遊び”尽くす。

あの人の観戦ってどんなだろう。

サッカーの自由な楽しみかたは、試合観戦のスタイルにこそ表れます。
スタジアムに足を運んで選手たちの熱気を感じながら観るもよし、好きなお菓子をつまみながら自宅のテレビで観るのもよし。どんな場所・服装で観たって、どんなところに注目して観たって良いし、”ながら観戦”だってアリなんです。
この企画では、各界で活躍するサッカー好きたちに、試合を観戦する時の極めて個人的なルールやこだわりをお聞きし、ユニークな楽しみかたを発掘していきます。

今回お話を聞いたのは、30年以上に渡ってサッカーへの熱い思いを持ち続けるお笑い芸人ウエストランド・井口浩之さん。ネタやテレビ番組では、世の中を鋭く切る芸風で人気を博していますが、サッカーに対しては「詳しい人もそうでない人も、思い思いに楽しむのが一番です」とあくまでマイルド。数々の熱戦を観てきた井口さんに、試合観戦のマイルールを伺いました。

井口さんプロフィール

知識も情熱も必要なし。
サッカー初心者の友だちが思い出させてくれる、あの頃の感動。

サッカーとは、もうかれこれ30年くらいの付き合いになりますね。小学生の頃に地元のサッカークラブに入団し、以降中学、高校、大学とサッカー部で汗を流す日々。ちょうどその頃にJリーグが開幕したこともあり、プレーするだけでなく観戦することにも夢中になりました。以来、国内のあらゆる試合は必ずチェックするようにしています。

中でも、スタジアム観戦は少し特別。サッカーを観に行くという目的はもちろんですが、「遊びに行く」という意味合いが強いんじゃないかな。大人になると「遊ぶ」と言っても、せいぜい友だちと居酒屋に行ってお酒を飲むくらいじゃないですか。でもスタジアムならば、高めのお通し代を払うような感覚で1日中遊び尽くすことができます。試合開始より1、2時間前に会場に向かい、スタジアムならではのビールやグルメを買いつつ、周囲を散策してお祭りのような雰囲気を楽しむ。それから、席に着いたら選手がアップをする様子も欠かさずに観察。まだ試合前で本調子ではないはずなのに、巧みなトラップを軽々と見せる選手の姿は、職人芸を見ているようで惚れ惚れするんですよね。そこも含めて楽しんでいます。

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モグライダーのともしげさんと、日産スタジアムで横浜F・マリノスの試合を観戦した時の様子。

お祭り気分で“遊びに行ける”場所なので、サッカー初心者の友だちも気軽に誘っていますね。彼らの感想は、僕が忘れかけているサッカーの魅力を思い出させてくれるんです。例えば、サッカーに特別興味があるわけではない芸人仲間のモグライダー・ともしげさんを誘って試合観戦に行った時、スタジアムの階段を上がりピッチが見えるや否や、「すげー!」って目を輝かせていました。あまりにも芝が綺麗に整備されていて驚いたようです。他にも、サポーターの声援の熱にも、選手の一つひとつのプレーにもいちいち驚いてくれて。僕にとってはサッカー観戦ってあまりにも身近なものなので感覚が麻痺しているのですが、たしかに「恵まれた環境だな」とか、「昔と比べて日本もサッカーが根付いてきたな」とか、感慨深くなります。誘った友だちが百発百中で楽しんでくれることが嬉しくて、ついつい連れて行きたくなってしまいます。

選手名鑑で、きっかけを見つけ、没頭する。

実際の試合観戦中の必須アイテムと言えば、選手名鑑。それこそサッカー初心者の友だちと行った時には、あまり口うるさく解説したくないので、気になった選手のページを一緒にチェック。選手名鑑には、選手の地元や誕生日、好きなタレントなどの小ネタも載っているので、些細なことですが「誕生日が同じだ!」と興味を持ったり、応援する理由に繋がったりもするんです。一方、家でひとり試合観戦をする時は、ファインプレーをした選手にどういう背景があるのかなど深掘りするように使います。テレビを見ている時ってどうしても仕事のことを考えてしまうのですが、試合を見ながら選手名鑑も読んでいると、そうしたことを忘れられるんです。サッカー観戦は、本当の息抜きの時間なのかもしれません。

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2022年版の選手名鑑も入手済み。2022年2月20日に行われたファジアーノ岡山対ヴァンフォーレ甲府戦でも、選手名鑑を持参して観戦。

サッカーを愛し、時に助けられている僕は、こうして魅力を知ってもらおうと広報のような活動をしていますが、実はプレーヤーとしては全然成功できなくて。学生時代も、ずっと補欠だったんです。でも、だからこそ選手たちがいかに狭き門を勝ち抜いてきたスペシャリストであるかを知っています。学生の頃にいた、あんなに巧かったチームメイトでさえ届かなかった場所にいる。テレビやスタジアムで見る選手たちは、僕たちの、みんなの代表なんです。