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身体づくりは、代表選手たちから学べ。

90分もの間絶えずピッチを走り続け、時に私たちには想像もできない動きでボールを操る日本代表の選手たち。非凡な才能と絶え間ない努力あってのプレーだということは言うまでもありませんが、彼らの日々のトレーニングには、私たちが日常生活を強く生き抜くためのヒントが隠れているかもしれません。選手たちが実践する身体づくりを探るべく、2007年から日本代表のアスレティックトレーナーを務め、代表選手たちを心身ともにケアしてきた前田弘トレーナーにお話を伺いました。

迂闊に真似すると危険? プロフェッショナルだからこそ実践できるトレーニングとは。

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我々日本代表のトレーナーは、世界各国のクラブチームやJリーグの各クラブで練習を積んだプロフェッショナルな選手たちを相手にしています。代表戦を控えた大切な身体なので、コンディションを落とさないことが第一。最良のコンディションで試合を迎えられるよう、我々トレーナーはサポートしています。試合に向けての調整が主なのであまりハードなトレーニングは毎日行いませんが、普段の練習や生活の節々からも、選手のストイックさや身体の強さを実感することがあります。

例えば、2010年のワールドカップに向けた準備期間、鹿児島の指宿での合宿中に「坂道ダッシュ」を行いました。グランド横にあった傾斜25ほどで約20メートルの坂道をダッシュで登り、ジョギングで降りてくるトレーニングで、選手たちは10本ほど休みなく走り続けていました。よく耳にするトレーニングかもしれませんが、下半身のベースができていないと筋肉系の傷害を起こしかねないので、我々トレーナーは内心かなりヒヤヒヤしていました。しかし、さすがはトップアスリート達。怪我をする選手は誰一人おらず、淡々とこなす様子には驚きましたね。他にも、ある年のワールドカップの試合翌日、試合で走り続けくたくたな選手たちに、監督からランニングが課せられました。リカバリートレーニングなのでゆっくりしたペースで走るように監督が指示したのですが、みんな結構いいペースで走るんですよ。時間を決めて走るので距離は人によって異なりますが、みんな余裕で長い距離を走っていましたね。試合の翌日、さらにリカバリートレーニングでこの走るペースと距離というのは、日頃の練習量の多さが伺えましたし、選手たちの当たり前は僕らの想像を超えてくるなと改めて思いました。

このようなハードトレーニングはごく稀ですが、淡々とこなす彼らを見ているとやはり身体のベースが違うなと。体幹を鍛えるブリッジの姿勢では、私は30秒が限界でだんだんプルプル震えてくるのに、平気で2〜3分維持するんですよ。綺麗な姿勢のままトレーニングを続ける選手たちには、脱帽です。私のトレーニング不足は言うまでもないですが......。

【前田トレーナーからの言葉】

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引き締まった脚を手に入れるためには、サッカー選手特有の筋肉がカギ?

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試合を観ていると、選手たちが相手の足元まで正確にパスしたり、敵からの強烈なボールを足関節で軽々受け止めたりする姿が見られますが、これらのプレーは内ももにある「内転筋」と呼ばれる筋肉が重要になってきます。チューブを使って鍛えることが多いので、選手たちは鞄の中にマイチューブを入れて、いつでもどこでも鍛えられるようにしているほど重要なんです。
日常生活ではあまり使われない筋肉のため、サッカー選手特有の筋肉といえます。ですが、内転筋を鍛えることでジーンズが似合う引き締まった脚を手に入れることができるんですよ。例えば、椅子に座って拳を内太ももに挟んで10秒間キープ。ボールを潰すようなイメージで内ももに力を入れます。たったこれだけかと思うかもしれませんが、無理ない範囲で毎日続けることの方が大切ですよ。

それから、もも前にある「四頭筋」と呼ばれる筋肉。ボールを蹴ったり、止めたりする時に使われます。選手たちはトレーニングマシーンなどで日々鍛えていますが、椅子に座りながらでも鍛えられるんです。例えば、椅子に腰掛け、足を伸ばして曲げてを繰り返す。これも寝る前に10回やるだけで、脚痩せや、たるみも防止に繋がりますよ。選手たちにもよく言っていますが、ポイントはどこの筋肉を使っているのか、頭の中でイメージすることです。選手たちが活躍する試合を観ながら、家でトレーニングしてみるのもいいかもしれませんね。

【前田トレーナーからの言葉】

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身体のためにサプリは摂らない? 甘酒と羊羹で栄養補給。

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結局、食事に関してはバランスが大切だと僕らも思います。よく食事で補いきれない栄養をサプリメントで補充しようと、私たちにもどのようなサプリを使っているのか聞いてくる方もいます。ですが、日本代表チームとしてはとしてはサプリメントは提供していません。代わりに、同等の栄養が摂れる食べ物を提供しています。バナナ、チーズ、干し芋のような無添加の食品、あとは、飲む点滴と言われている甘酒や添加物が少なく糖質が摂れる羊羹も鉄板です。僕らの拠点であるJFA夢フィールドには、干し芋やむき栗が買える菓子の自販機が置いてあるほど。レパートリーは、情報通の選手たちからこれいいよと教えてもらって加えることもありますね。

それから、やはり運動量に見合ったカロリーを摂取してほしいと思っています。中学生年代の育成選手には、1日3,000カロリー、毎食大盛りのご飯、バランスよい食事を食べるように伝えてます。成長するためのエネルギーも必要ですし、過酷な練習を考えると3000カロリーなんてあっという間です。

ただ、日本代表選手になると、我々トレーナーは普段の食生活に口を出すことってあまりないんです。食事は1日の貴重な休息時間。あれこれメニューを指示されたり、つまらない話をされたりしたら、せっかく好きなメニューでも美味しく感じないし、かえってストレスになってしまいます。お風呂だって、嫌な出来事を思い出しながら入るよりも、鼻歌を歌いながら入って欲しい。だから夕食にデザートを添えてみたり、お風呂に入浴剤を入れてみたり、なんとかリラックスして欲しいという想いで選手に接しています。

というのも、練習や試合中の彼らは、仕事中のみなさんと同じく、交感神経を酷使しているので疲労が溜まっています。その疲労を取り除くためには、反対に副交感神経を優位にしてあげることが必要です。過酷な練習が終わったら、リラックス空間を楽しむ。そのオンとオフのメリハリが、疲労回復に繋がっているんです。

選手たちに関わらず、日中仕事をしているみなさんも同じく交感神経を使っています。仕事が終わったらとことん自分を甘やかすことで、きっとより良い明日につながりますよ。

【前田トレーナーからの言葉】

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<教えてくれた人>

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イラスト / 大木貴子