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【90分間の観戦マイルール】Case2 作家・津村記久子さんは、通路側席で試合も空間も満喫する。

あの人の観戦ってどんなだろう。

サッカーの自由な楽しみかたは、試合観戦のスタイルにこそ表れます。
スタジアムに足を運んで選手たちの熱気を感じながら観るもよし、好きなお菓子をつまみながら自宅のテレビで観るのもよし。どんな場所・服装で観たって、どんなところに注目して観たって良いし、”ながら観戦”だってアリなんです。
この企画では、各界で活躍するサッカー好きたちに、試合を観戦すると時の極めて個人的なルールやこだわりをお聞きし、ユニークな楽しみかたを発掘していきます。

今回お話を聞いたのは、作家の津村記久子さん。2005年に『君は永遠にそいつらより若い』で太宰治賞を受賞してデビューして以降、『ポトスライムの舟』、『この世にたやすい仕事はない』など、淡々とした日常の中に交えたユーモアが魅力の作品を世に送り出し続けてきました。実はスポーツ好きだという津村さんの著作には、J2リーグのサポーターをテーマにした作品『ディス・イズ・ザ・デイ』も。ご自身もスタジアム観戦に出かけるサッカーファンだという津村さんに、独自のルールを伺いました。

津村さまプロフィール

上着に座布団、通路側席。
“神話”を観る準備は、これで完成。

それまで、ワールドカップの度に楽しく観ていましたが、選手の名前を覚えたり、リーグやクラブ単位でサッカーをとらえるようになったのは、2006年のワールドカップドイツ大会がきっかけです。日本代表のグループステージ敗退や、中田英寿選手の引退など残念なこともありましたが、アルゼンチンのフアン・ロマン・リケルメ選手を好きになり、情報を追ってサッカーのニュースを毎日読むうちに、自然といろいろなことを覚えました。ドイツ大会では、決勝でフランス代表チームのジネディーヌ・ジダン選手の退場があったりして、自分には何かリアルタイムで観ている神話のようなものにも思えました。それでサッカーを見続けようと思いました。以来ずっと、私にとってはサッカーは神話的なものであり、大小の物語が集積する現代の城のように感じられるものです。

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2006年ワールドカップドイツ大会日本代表のブラジル戦での一枚。中田英寿選手の現役最後の試合となった。©JFA

全試合に共通しているマイルールは、折りたたみ座布団を敷く、よほどの真夏でない限りは上に一枚着られるものを持っていく、できるだけ通路側に席を取る、です。

実際にスタジアムで観戦をするようになって、スタジアムの席はただの屋外ともまた違った環境だというのを知りました。暑さ以上に寒さには気を使います。何度も寒さに気を取られて試合に集中できず悔しい思いをしたので、寒くなくなるためには荷物が重くなることを厭いません。

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雨の日の京セラスタジアム。悪天候でも試合を楽しむためにしっかり防寒対策をするのが津村さん流。

あるスタジアムで、五月の終わりに雨に降られてガタガタ震えながらハーフタイムに熱いコーヒーを買いに行ってそれでも寒くて後半の記憶がほとんどないということがあって、それ以来防寒については気をつけるようになりました。
折りたたみ座布団については底冷え防止です。サッカーでなくラグビーのトップリーグの試合を、十二月に朝から二試合観戦して、その後の予定をキャンセルするほど疲れ果てたことがありまして、これからは最低限座面だけでも守ろうと決意しました。それからもいくつか厳しい試合を経験し、防寒には終わりがありません。

通路側に席を取るのは、試合前はよく席を立ってスタジアム内や周辺を歩き回るためです。通路側に座って、出入りしやすい状態で試合を見るのはとても好きです。試合前にサポーターさんたちの様子やスタグルやグッズ売り場、他の催しを見て回ったり、試合中でも飲食するものを買いに行ったり来たりしながらスタジアムで過ごせるのが気に入っています。コンコースから試合を観られるスタジアムで、スタジアムグルメのお店に並びながら試合を観ている時は幸せを感じます。

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