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【あの頃、わたしはサッカーに夢中だった】第1回 映画監督・佐藤快磨さん

サッカーとの思い出は人それぞれ。
プレーしていた時のこと、当たり前に見ていた風景、その時感じたことのひとつひとつにドラマがあります。この企画では、各界で活躍する方にご自身のサッカーとの繋がりをお話しいただくことで、さまざまな角度から見える「サッカーの景色」をお伝えしていきます。

今回、お話を伺ったのは女子マネージャーの視点で高校のサッカー部を描いた映画『ガンバレとかうるせぇ』を手掛けた佐藤快磨監督。小・中・高とサッカーに打ち込み、同じくらい夢中になれることを探して映画制作にたどり着いた佐藤監督のこれまでのサッカーヒストリーを伺いました。

佐藤監督プロフィール


脳裏に焼き付いている、日韓ワールドカップのワンシーン。

5歳上の兄がサッカーをやっていたこともあり、幼稚園の頃からサッカーを始めました。家にはジーコのサインがあるのですが、おそらく父が地元秋田で鹿島アントラーズの試合があった際にもらってきたものだと思います。これまで見た試合で思い出に残っているのは、中学1年生の時に開催された日韓ワールドカップ。アルゼンチン対スウェーデンの試合を父と兄と宮城スタジアムへ見に行きました。アルゼンチン代表のバティストゥータ選手が、予選敗退が決まってベンチで泣いていたのをよく覚えています。この時のことは、昨年公開の映画『泣く子はいねぇが』で主人公たすくとその友人・志波が、その試合でフリーキックを決めたのは誰だったか、と会話をするシーンにも反映しています。

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©2020「泣く子はいねぇが」製作委員会

小学校、中学校に引き続きサッカーに打ち込んでいた高校生の頃、イギリスのブリッドポートというところに10ヶ月間留学をしました。交換留学ですが、自分としては「サッカー留学」のつもりで、現地で大人から子供までサッカー好きが集まるようなクラブでサッカーの練習に励んでいました。ただ、週に1回の活動だったこともあり、プレーは上達せずに帰ってきてしまいました。

帰国後はプレーが上手くできず、自分にとってサッカーが苦しいものになってしまい、冬の選手権予選を待たずに高校3年生の夏で部活をやめてしまいました。大学でサッカーに代わって夢中になれるものが何か見つかると思っていましたが、サッカーをやっていた頃の自分と比べてしまう。やめてしまったことを引きずっていた中で、映像をやってみようと思ったのが就職活動の時期。中学校の頃からナイキのCMが好きだったので、映像制作の会社に興味を持ち、そこから映画学校に入ることになりました。そこで初めて映画を撮った時に、これをやりたい、情熱を傾け続けられるものが見つかったと感じました。


サッカーでも映画でも、”ゾーンに入る”瞬間がある。

サッカーと映画作りは通じるものがあると感じています。映画を作っている現場の雰囲気は、試合中に、全員が意思疎通を図って一つのものに向かっていく士気、高揚感に似たものがある。サッカーでは、試合中にお客さんの声援があると普段以上のプレーができたりすることがあります。アスリートの方はそれをよく「ゾーンに入る」という表現をされていますが、俳優さんのお芝居にもそういう部分があるんじゃないかと思っていて、俳優さんたちが少しでも「ゾーン」に入りやすい環境を作ったり、脚本ではセリフの裏にウソを混ぜ込んで、俳優さんたちが相手のセリフにより敏感になれるよう気をつけたり、そういったことを心がけています。
イギリスのケン・ローチ監督の映画には、ところどころサッカーにまつわるシーンが入っていて、『ケス』という作品では、マンチェスターユナイテッドの選手になりきった体育教師が生徒たちとサッカーをするシーンがあり、大人げない発言の連発に思わず笑ってしまいます。自分もそんな風に、映画のちょっとしたワンシーンで市井の人々にとってのサッカーを描いていきたいですね。

監督の実際のエピソードが反映されたシーンに注目!『泣く子はいねぇが』の詳細はこちらをご覧ください。また、本作品のBlu-ray(特装限定版)の特典ディスクに収められている、佐藤監督が高校のサッカー部を描いた2014年の映画『ガンバレとかうるせぇ』もお見逃しなく。

作品紹介