【あの頃、わたしはサッカーに夢中だった】第5回青山ブックセンター本店 店長・山下優さん
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【あの頃、わたしはサッカーに夢中だった】第5回青山ブックセンター本店 店長・山下優さん

SAMURAI BLUEの中の人

サッカーとの思い出は人それぞれ。
忘れられない試合のこと、当たり前に見ていた風景、その時感じたことのひとつひとつにドラマがあります。この企画では、各界で活躍する方にご自身のサッカーとの繋がりをお話しいただくことで、さまざまな角度から見える「サッカーの景色」をお伝えしていきます。

今回、お話を伺ったのは表参道にある「青山ブックセンター本店」店長の山下優さん。
高校までプレーしていたサッカー経験が書店のお仕事に活かされていることなど、これまでのサッカーヒストリーを伺いました。

「ゾーン」に入った、高校最後の大会。

父の転勤で0歳半〜5歳まで住んでいたロンドンでは、サッカーが当たり前にある環境でした。通っていた学校の校庭は芝生になっていて、よく友人とサッカーをして遊んでいました。今思えばこれが初めてのサッカー体験かもしれません。日本に帰国し、横浜のサッカークラブに入団。ちょうどJリーグが始まった時期で、横浜マリノスのスクールにも入っていました。「ヴェルディよりもマリノス派」で、ラモン・ディアス選手や水沼貴史選手を応援。家族やサッカースクールの友達と一緒に、三ツ沢球技場へフリューゲルスとマリノスの「横浜ダービー」などを見に行くこともありました。中学校でもクラブチームに入ってプレーしていたのですが、膝の成長痛(オスグット)で走れない時期が続き、試合に出られず不完全燃焼で歯がゆい思いをしていた時期があったことを覚えています。

高校では、普段の練習はもちろん、朝練や練習後の居残りなどの自主練もこなし、「高校サッカー漬け」の日々でした。そのような日々を過ごすなか、高校最後の大会で、いわゆる「ゾーン」に入ることができたんです。1点負けている場面で、自分に目がけて出されたロングボールではなかったのですが、気づいたら走り出していて。ボールに届くまで、自分も周りの動きがスローモーションで、かつ少し先まで見えて、ゴールを決めることができた。なかなかできないようなこの経験で悔いなくやり切ったという気持ちになりました。

よく足を運んだ三ツ沢競技場。ピッチまでの距離が近いのが魅力。

夜勤と掛け持ちでスタートした書店の仕事

サッカーは高校で一区切りつけた気でいて、大学では時々フットサルをするくらい。大学に行きながら、ほとんどアルバイト三昧でした。2、3年もあれば仕事で夢中になれそうなことが見つかるかもしれないと、能天気にいましたが、結局就活の時期になっても、どうしてもやりたいものが見つけられませんでした。どうしようと思った時、洋雑誌をよく探しにもともと青山ブックセンター本店によく足を運んでいたことがきっかけで、本屋さんの仕組みがどうなっているのか知りたいと、軽い気持ちで働き始めることになりました。当時は時給790円。これだけでは生活できないので、書店とは関係のない夜勤の仕事もしていました。そんな中で、2011年3月11日がひとつの契機になりました。当日が元々、夜勤の最終出勤日でした。テレビから震災のショッキングな映像が流れたり、身近なところでも品川駅が閉まったり、地面が割れたり、マンホールが飛んだりと、これから世の中がどうなっていくか全くわかりませんでした。そのような中で、残っていくものにしっかり関わっていきたいと思いました。人々の思いを繋いでいく「本」は、残っていくものの一つかもしれないと思い、書店の仕事に本腰を入れていくことを決意しました。

「棚」を任されることで気づいた仕事の面白さ

実は、ずっとサッカーばかりしてきたので、本をすごく読んでいたタイプではなかったんです。だからこそ、ジャンルにもこだわりを持つことなく、フラットに見ることが出来て、柔軟に吸収しながら続けられているんだと思います。さらに本屋の仕事にのめり込んだのは、ひとつの「棚」のレイアウトや注文を任されるようになった時。本を並べて推していくという作業自体が新鮮で、「売っている」というより「届いている」という感覚でした。サッカーで体の向きを少し変えただけでブレーが変化するように、どの本をどうやって、どの場所で推していくのか、並べる場所、並べ方、横との繋がり、棚での文脈といった部分を変えるだけでも反響があり、売上が動いていく。本が売れる要素は、その時代感やタイミングなど複合的な要因が集まっていますが、書店員は色々な面で本と接している時間は長く、特にお客さんに届く瞬間を多く経験しているので、表紙や著者、あらすじを見ると次にヒットしそうな本にピンとくるのが強みです。青山ブックセンターは、表参道という土地柄なのか、新しい著者やこれからヒットしそうな事柄に興味があるお客さんが多いです。その著者にいわゆる実績がなくても、面白そうであれば、お客さんに届いていきやすいので、これは興味を持ってもらえそうだなと思える本と出会えたらすごくワクワクします。一方で売上という結果もすごく大切だと考えています。売上という結果が出ていないとお店が残っていけないので当たり前のことですが。数字や売上だけを考えているわけではないのですが、サッカーで培った「結果を出さないと試合にも出られない」という感覚も影響しているかもしれません。また、自分は身体能力が高いタイプではなかったので、サッカーでもずっと頭を使って、フィジカルが強い人に対抗する工夫をしてきました。制限や制約がある中でやっていくという面では、仕事も一緒で全部自由にできるわけじゃないですよね。ただその中で、単純に足し算だけでなく掛け合わせていくというか、工夫次第で結果を残していけるのはサッカーも仕事も一緒だと感じています


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SAMURAI BLUEの中の人
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